乗降者数世界一の新宿大ターミナルの片隅に、時代の流れに逆らうかのように踏みとどまる個人商店、ビア&カフェ・ベルク。そのオーナーでもあるベルク店長井野が、インタビュー形式で現場の生の声をお伝えします。
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. Edit
  2. | Permalink
  3. | Category:スポンサー広告
  4. |
ベルクの立ち退き問題が、わかりにくいという声が多いです。なるべくわかりやすくご説明いただけますか?
「わかりやすくしようとすると、かえってわかりにくくなる(笑)。できればルミネさんに、ぶっちゃけていただきたいですね。言い出しっぺですから。私どもは、そのルミネさんから「(突然、勝手に)ここはファッションゾーンになりましたから」と言われただけです。それ以上、何の説明もなし。外野席から「時代の流れ」とか、「赤字で潰れた駅ビルの再建の一環」という声も聞こえてきて‥」
 じゃあ、ベルクは時代遅れ?駅ビルを赤字にした犯人?と聞き返したくなりますね。むしろビルへの貢献度は高いほうでは?
「それでもなりふり構わず、何度お断りしても「出ていけ」と、ルミネさんの意志だけは石のように固い」
 ただ、ベルクだけじゃないわけでしょう。立ち退きを迫られているのは。
「この2年半、テナントばかりでなく、マイシティ(旧駅ビル)営業部、子会社の顔ぶれもいっせいに変わりました」
 マイシティの色がついたものは何であれ、目ざわりなのか。
「うちはあくまでも駅ビルと賃貸契約を結んだテナントです。マイシティに従属していたわけじゃない。場所もビルから少し離れていますし。ある程度独自路線でやってきた」
 マイシティとも馬が合わなかった?(笑)
「めざすものは微妙に違いました。マイシティはイメージ優先、うちはイメージより実質といように」
 ルミネ色に染まるつもりもない?(笑)
「色々な色が重なったり、ズレたりしたほうが絵的に綺麗じゃないですか」
 妥協すべきところはして?
「ルミネさんも、JRの子会社とはいえ、独自路線で飛躍的に伸びた企業です。テナントとの関係も、表向きは「信頼」より「緊張」みたいなことをおっしゃる。それはそれでいい。ただ、いきなり「出ていけ」じゃ、関係そのものの否定じゃないですか」
 だけど、大家さんの言うことは絶対?
「こちらはお借りしている身。そりゃいつかはお返しせにゃならんでしょう。ただ、最低限の義務を怠る(家賃を払わない)とか、よほど反社会的なことをするとか、あちらによほどの事情があるとかしない限り、こちらに営業を続ける権利はあるんです。賃貸契約とは本来そういうものです。多少意見の相違はあっても、共存共栄という原則があった。だからこそ、私たちも一生の仕事のつもりでやってきました。それを何の前触れもなく、大家が変わったというだけで、なかったことにしてくれといわれても」
 昼ドラみたいですね。
「こちらがお願いしたいのは、営業継続の大原則はふまえてほしいということです。これじゃどっちがゴネているかわからんですよ。理由もなく、法律も関係ない、こっちの言い分も無視じゃ」
 法廷にゆだねるしかない?
「まあ私たちも、知らんぷりして営業を続けられないことはない。そのうちあきらめて下さるといいんですけど(笑)」
 応募ブログにも、お客様からのメッセージが続々と寄せられています。
「ありがたいです。連日の客数や売り上げを見ても、お客様の応援をひしひしと感じます」
 こういうお客様のメッセージが、法廷での切り札になると聞きましたが。
「商売というのは、お客様がいてはじめて成り立つものです。お客様こそ当事者なんです。ルミネさんが「守秘義務」という言葉を盾にお客様への説明をこばんだり、私たちの口をふさごうとしたりするのはもってのほか」
 請願書に寄せられた1万人以上の署名も、法的に実効性がある?
「というより、まずルミネさんがどう受け止めるかでしょう。今のところお返事はありません。法廷にゆだねられたら、裁判官がどうご判断するかです。それは何ともいえないところがあります。ただ、お客様にしても私たちスタッフにしても、中森明夫さんのおっしゃるように、ベルクが『人生の一部』になっている。ベルクがこの場所からなくなるのは物凄く困ることなんです」
 まず相手にそれを訴えようということですね。
「ルミネさんや外野席が何とおっしゃろうと、私たちはそうした声(声なき声を含め)に支えられています」
 外野席はそんなにうるさい?(笑)
「いや、お騒がせしているのは私たちのほうです。幸か不幸か、世間の注目を集め、ベルクをよくご存知ない方でも、心配して下さったり励まして下さったり。ありがたいことです。ただ、ちょっと上から目線というか(笑)、えらい人に逆らってばかりじゃダメよとか、引き際も肝心よとか、アドバイスして下さいます」
 ご親切というか余計なお世話ですね!
「ありがたいですけどね。おいしいコーヒーでもどうぞ。一息ついていって下さいと申し上げたい気持ちです」
 ぶっちゃけ、店長があの場所にこだわるのは、商売的にめちゃおいしいからですか?
「めちゃハードですけど、やり甲斐のある場所です。やる気満々のルミネさんと手をくめば、最強のコンビなのに!手をふりほどこうふりほどこうとされる(笑)」
 確かに、最後はお客様の判断にゆだねるしかない。
「一日150万というJR新宿駅の利用者にもアンケートをとりたいくらいです。ベルクは東口改札そばにふさわしいかどうか。それともルミネさんがおっしゃるように、若い女性向けのオシャレな洋服屋さんや雑貨屋さんで埋め尽くされるべきなのか。もし、うちが東口のあの場所に必要なしと判定を下されば、潔く引き下がる…かな?うちの連中は負けず嫌いだから(笑)、認めていただくまで燃えるかも」
 それがベルク魂?
「商売って、本来場所に根付いたものです。単に物を売るなら、ネット販売のように場所にとらわれない方法もあります。飲食店はそうはいかない。原始的というか、商売の原点みたいなものです。物を売るといっても、食べ物や飲み物ですから、その場で作ってその場で売ってその場で召し上がっていただく…商品が『その場』とセットになっている」
 ただ、それは場所を変えてもできることですよね?
「実際には、ほぼ白紙の状態に戻ります。それまでの経験やノウハウはある程度生かせますが、場所が変われば店そのもののあり方が変わってしまう。特にベルクのようにターミナルの特性を最大限に生かした、知る人ぞ知るような個人商店がそこから切り離されたら、根本的にやり直さざるを得ません」
 その点、チェーン店はどうにでもなると。
「本当は現場レベルから見れば、チェーン店も個人店もないんですけどね。確かにチェーン店というのは、牛丼なら牛丼というある明確に統一されたイメージがあって、店名も内装も味もシステムもワンパックにおさまるようデータ化されている。どこへでも持っていける(複製可能な)のです。もしベルクがチェーン店で今の店が100店舗あるうちの一つだったら、ジャーマンカフェでも何でもいいんですが、一目で何屋とわかる、のっぺらとした店でしょう(笑)。そこが一つなくなっても、残り99の同じような店があるわけです。ただ、新宿東口なら新宿東口というその場所特有の人の流れや店の使われ方というのがあって、それはチェーン店であろうとなかろうとそこにしかない空気を(長い年月をかけて)醸し出すんですね」
 なるほど。味やイメージはある程度データ化できても、空気はムリということか。空気も、その店の重要な要素ではある。しかし、ベルクはすべてがデータ化しにくい(笑)。
「あるビルのオーナーから出店依頼を受けたことがあるんです。店名より味より、まずこの空気、このざわざわした、それでいて妙に落ち着く雰囲気がほしいと(笑)。ある意味、ベルクの本質をついている。ただうちと立地条件が違うため(その物件は、駅から少し離れたビルの2階にあった)、そこにマッチしたアイディアを提案しました(こだわりのマニアックな漫画喫茶)。ご期待に添えなかったみたいで、ポシャりましたけど(設備投資に何千万かかるし、10年はいさせて下さいとお願いしたら、そんな大がかりじゃなくていい、ベルクのあの雰囲気だけ持って来てくれればといわれました)」
 あまり気軽によそでやれば?ともいえない。
「気軽には(笑)。個人店ならではの空気って、「場所」も重要な要素なんです」
 そこをリセットするのは、人生をやり直すのも同じ。
「ベルクみたいに鮮度が命の上質な食材を沢山さばいて価格もおさえてといういわば「飲食店の奇跡」が実現するには、今のような立地条件でなければ難しい。大丈夫、ベルクならどこでも通用すると励まして下さる方もいます。とても心強いです。もちろん、どこへいっても頑張るつもりです。ただ、今のベルクは消滅する可能性が高い。数年前に法律が改正(悪)され、テナントの営業権は守られない契約も認められるようになって‥いわゆる定期契約です‥新規で出店するにしても、駅周辺のような一等地では大家が数年単位の定期契約しか受け付けなくなりました。テナントの使い捨てです(私たちも、大家のルミネさんから2年の定期契約へ切り替えるよう迫られました。契約の中途変更はお断りできる‥つまり家主は強要できない。両者が同意しない限り契約は変わらない‥にもかかわらず、従わないなら今すぐ出ていけ!と。これは一種の強要でしょう)。数年の定期契約では、飲食店は設備投資しても元がとれません。資本力のない個人店は、事実上排除されることになります。せいぜい大手が、一等地への出店をイメージ戦略の一環(見本市)と割り切って、いつでも店をたためるよう設備をなるべく最低限に抑え、あるいは使い回しして、半ば作り置きの工業製品みたいな商品を提供することくらいしかできなくなりました。今、店の移転は営業権の喪失をも意味します。動こうにも動けない」
 ルミネさんに限らず、JRの敷地内から立ち食いそばの隠れた名店(熟練を要する店)がどんどん消滅している、と明治学院大学教授の原武史さんが「週刊新潮10月30日秋季特大号」で指摘しています(駅そばが消えた「エキナカ」何かヘン)。表向きオシャレな高級店や有名店ばかり増えて。それもJRの意向なのでしょうか。
「駅というきわめて公共性の強い施設を(元々国民の共有財産だった)、JRは目先の金儲けにしか使っていないという記事でしたね。おいしい立ち食いそば屋が減って、サラリーマンやOLがホームのベンチでコンビニのおにぎりを頬張っているのを見ると、かえってもったいない(駅は利用者のために有効活用されていない)気はします」
 問題提起という意味もこめて、店長はこの立ち退き問題を公表したのですね。
「ベルクの存続がどうあれ、賃貸契約や国家事業の民営化、企業優先の政策といった問題は、今の日本では誰にでも多かれ少なかれ何らかの形でふりかかってくることです。もちろん立場によって見方は変わるし、ケースバイケースですが、だからこそベルクの問題も参考事例の一つになるんじゃないか。一番気をつけなければならないのは、こうした問題がわかりにくいままうやむやにされることです。そうなると、取り返しのつかないことになる。だから、確かにわかりにくいけど、いつでもどこでも誰にでも一通り目が通せるような材料をそろえておきたかったのです」


スポンサーサイト
  1. Edit
  2. | Permalink
  3. | Category:未分類
  4. | トラックバック:0
  5. | コメント:0
  6. |
コメント









:

トラックバックURL
http://tomoyaino.blog.fc2.com/tb.php/3-d4e6d2ba
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。