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乗降者数世界一の新宿大ターミナルの片隅に、時代の流れに逆らうかのように踏みとどまる個人商店、ビア&カフェ・ベルク。そのオーナーでもあるベルク店長井野が、インタビュー形式で現場の生の声をお伝えします。
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①密室ーNOといえない空気

前回のインタビュー(最後の決め手はお客様)では、わかりにくい立ち退き問題を、店長からわかりにくく説明してもらいまして…(笑)

「あれでだいぶ整理できたと思うのですが」

精一杯の整理だったと思います。まず、この問題を誰に向けて公表したか。お客様である、と。当事者であるお客様に、まずご意見が伺いたかった。その答が、応援ブログや営業継続を求める一万人署名にあらわれた。また、お客様に限らず、駅のあり方、弱者使い捨ての政策を問う意味もあった。さらに、個人店の危機という意味では、新宿や下北沢の再開発の問題にも通じる。

「大風呂敷広げないで下さい(笑)。公表といっても、元々、壁新聞や店のホームページを使ったお客様向けのものです。それをメディアでも取り上げて下さるようになって。私ども来るもの拒まずですから」

どんな形で報道されるかわからないという不安はありませんでしたか?

「お手柔らかに、とは申し上げております。皆様うちのお客様なので」

取材といっても、応援なんですね。

「新宿駅にこんなお店があった。今、こんなことが起きていると割と淡々と書いて下さるので、さりげなく店の宣伝にもなって、お蔭様で連日大忙しです」

これだけこじれたのはなぜ?という声もあります。

「こじれたというより、ルミネさんとは法的なことを抜きにすれば、単にすれ違いなんですね。お互いに一方通行というか。そういえば、今、個人レベルでも、契約社員に限らず一方的な解雇ってあるでしょう?ちょっと待って?といいたいのにいえない空気。いったら空気読めないやつにされて。でも、いわなければ解雇…」
 
そうなんです。一つ念を押しておきたいのは、これはベルクだけの問題ではないということですね。現在、裁判でルミネさんと争っているテナントさんもあります。そちらの方がこじれているといえばいえる。ただ、立ち退きを迫られていることを公表したのは、今のところルミネエストの中では、ベルクの他に一店舗だけです。この二つのお店は、退店が人生のやり直しを意味する個人店であるという点、また経営が順調で出ていく理由がないという点で共通しています。

「昨日の自分を否定する。ルミネ社長の信条です。カッコイイっすよね。カリスマ社長にふさわしい。ただ、それを部下の方たちがお経のように何度も唱えると、何だかこちらまでそんな気になって…」

あぶないあぶない。密室で話を進めず、公表したのは正解だったと思います。ただ、決断までに三ヶ月近くの時間を要したとか。どうなるか読めませんでしたしね。実際、反応は様々でした。お客様から熱烈な支持をいただく一方、外野席からはルミネ側の言い分も聞かなければフェアでないという声もあります。前回のインタビューで、店長自身、ルミネさんが言い分をはっきりさせないのが、この問題のわかりにくさの最大の要因と指摘しています。それから、定期契約=追い出しという考えは短絡すぎるという意見もありますね。これは一部の報道への反応だと思いますが。

「定期契約を認める法律が悪法とは、一概にはいえません。それで救われる人もいる(貸す側のリスクが減る)。ただ、人々の死活問題にかかわる法律であるにもかかわらず、意外と世間に浸透していない。その契約には、自動更新がありません。そのことを知らない個人店の店主(借家人)の無知につけこんで、定期が追い出しの道具に悪用されているケースも実際あるのです。一応、大家に説明義務はありますが、契約そのものが半ば儀式化している。日常において、契約に同意する場面って結構ありますが、いちいち全部に目を通さないでしょう?それでトラブルに発展することはまずないからです。さすがに営業権に関するような重大な契約は慎重になるべきですが、それでも店主がスルーしてしまうことって、ないではない。スルーする方が悪いという『自己責任』の論理は相変わらず根強いですけれど、契約ってそもそも、信頼関係を築くために結ぶものでしょう。でなければ、信頼関係が破壊された時の法的な切り札です。破壊するための道具ではない。うっかりサインしてしまった。後の祭と泣き寝入りする人たちが少なからずいるのは、どこか根本的に問題があるのです。私は、法的には、店舗の定期契約をせめて新規に限定しなかったのが混乱の原因だと思う。住居の場合、間違ってサインしたら路頭に迷いかねない。だから、定期への中途変更が認められません。定期契約を結べるのは新規のみなんですね。ところが店舗の場合、認められる。一つくらい店舗がなくなったって致命傷にならない大手系列店が基準だからでしょう。店舗だってうちのように個人店は住居と同じく、それ自体が生活の基盤なのに(もっとも、行政レベルでは、住居でも中途変更を認め、説明義務をなくそうとする動きがあるので要注意)」

 ーただ、ベルクはサインしなかった。ということは、命びろいしたはずです。にもかかわらず、今、出ていけといわれている。そこがまたわかりづらい。

「定期契約=必ずしも追い出しではないんです。自動更新がなくたって、再契約の条件を双方でつめればいい。まあ一等地では、立場が強い大家に有利な展開になるでしょうが、あくまでも原則論でいえば、契約を新たに結ぶにしても、変更するにしても、お互い誠意をもって納得いくまで交渉すればいい。少なくとも、私たちはその覚悟でした。どんな素晴らしい、心が傾いてしまうような条件が待っているか、と(笑)。ルミネさんのおっしゃるように、契約は個々で結ぶもの。個々の状況に応じて多様な結び方があるはずです。事実、ルミネさんもベルクの営業成績なら再契約はありうるというお考えのようでした。が、条件の提案はなかった。こちら
は今まで通り続けたいだけですから、具体的な提案を出すのは契約を変えたいルミネさんの方でしょう。が、それはなく、あったのは2年か3年という契約期間の選択肢だけでした」
 
で、新しい契約書にサインしろと?それは、ちょっと待って下さいですよね。

「店を次から次へと入れ替えるというルミネさんの経営方針に合致はするでしょうが、再契約の判断基準が大家のルミネさん側にしか見えないというのは非常に恐ろしい感じがしました。特にうちのような長期熟成型でやってきた店には」

黙っていうこと聞け、というようなもんですもんね。何の展望ももてない。
「うちはルミネさんの家来ではありません(笑)。賃貸契約を結んでいるだけです。ルミネさんの経営方針に無条件で従う義務はない。もちろん、なるべくご協力したい気持ちに変わりはありませんが、それでも譲れるところと譲れないところがあります。いずれにせよ、もう少し具体的な交渉になっていれば、お客様を巻き込むこともなかったのですが」

要するに、交渉は決裂したと。

「交渉にすらなっていない。契約を変更するには、新たな合意が必要です。その手続きを一切踏んでいません。だったら、今の契約でいくのが筋です。なのに、いきなり出ていけ!と。え?という感じです。合点だ!という訳にもいかず、すれ違いのままです」


②孤独ー店は声をあげにくい

ベルク本のキャッチフレーズにもあるように、個人店の危機は日本の危機。時には声をあげることも大事です。そういう意味でも、ベルクは一つのサンプルになるのでは?

「立ち退きを迫られている店の店主や、定期契約にサインして追い出された店の店主からメールをいただいたりもします。本に私の携帯のアドレスがのせてあるんです」

やっぱり、きますか!

「こちらは悔しい思いをしましたが頑張って下さいとか、名は明かせないけど励みになりますとか」

共に闘おうみたいな?

「ノリノリじゃないです。店やりながら立ち退きって、本当にきつい」

ただでさえ忙しいし。

「忙しいのはいいんです。店主が一人で背負うには重すぎる。ベルクでは、お客様が味方して下さるから無茶苦茶心強いですけど」

一人で悩むことはない。

「『立ち退き』って、店にしてみれば禁句です。商品が生活必需品とは限らない。記念品だったり、お土産だったりしたら縁起悪いじゃないですか」

客にしてみれば、わざわざそこで買うこともない。

「業者さんだって、あそこヤバそうだと引いちゃう。スタッフだって不安だろうし、新しい人材も集まりにくくなる。店主は何もいえず孤独なんです。立ち退かせる方はてこずると思うかも知れませんが、店主はそれ以上に追い詰められる。個人店って、仕事も生活も夢も希望もすべてその場所にありますから、そこを去るのってもう根こそぎという感じなんです。そのやりきれなさったら、なかなかわかってもらえないかも知れません。大家さんにどんな事情があるにせよ、誠意ある対応をしていただかないと、単なるイジメになりかねない」

ベルクでは全く逆のことが起きています。お客様の応援はあるわ、職人さんたちとの結束は固まるわ、スタッフ

「応援で働きに来てくれるアルバイトもいます」

なぜベルクは「立ち退き」という言葉が似合うのですか?(笑)

「似合っちゃいない。イメージより実質重視のスタンド式カフェだし、やたら活気があるので自然に溶け込んでしまうのです(笑)」
立ち退きで苦しめられている店主たちとは情報交換とかするんですか?

「ええ。例えば、JR系列の駅ビルはどこも頻繁に呼び出しがあるとか」
 
やっぱり、出ていけ、と?

「わりと些細なことでちょこちょこ呼び出される。お客様にレシートを必ずお渡しして、とか」

そんなことで?といったら語弊があるかも知れませんが、店のオーナーが部屋に呼び出されるようなこと?

「と思えば、新しい契約書にサインして、とかね」

油断できない。

「やはりJR系列の駅ビルですが、クレジットの控えの受渡し方を間違えると、1時間半の講習を受けさせられるそうです。スタッフに1時間半も抜けられたら現場は大変ですよ。しかも、10年以上のベテラン店長がレジの打ち方から習わされる。罰ゲームじゃないんだから。そりゃプロである以上、ミスはあってはならない。でも、ミスした後、どうフォローするかなんですね。接客で重要なのは。ミスの度に罰ゲームじゃ、やる気なくなります。その店長は、ミスする度にパニック状態に陥るようになってしまった。レジならまだ人命にかかわりませんが、これが電車の運転手だったらと思うと」

ぞっとします。でも、自分たちだけじゃないんだと思えば、そうした情報交換も多少救いになりますね。

「駅ビルの個人店なんて、ほとんど横のつながりないですから」


③サンプルー個々の問題

再開発で一つの店のみならず、一つの町が消滅することもあります。一度なくしたら、二度とその風情は戻らない。うまいこと残せないか、守れないかという議論が活発化する一方で、そんなのはノスタルジーに過ぎないという痛烈な批判もあります。

「私も取材の方に聞かれたことがあります。どう思いますか?と。いや、どうもこうも、うちはノスタルジーで続けている訳じゃない」

元々、下北沢問題に絡んだ発言のようです。

「その一言で、立ち退き反対という図式は色褪せてしまったと」

困っちゃいますね。そんなこといわれても。

「その方は自問自答という感じでしたけどね。結局、その時の企画は通らなかったものの、別の形で大変お世話になりました。私自身、色々考えるきっかけになった。例えば、どこか知らない土地へ行って、たまたまその風景が気に入って、これは絶対に守らなくてはといっても、旅行者の勝手な感想でしょう?守るというのが、そもそも当事者の発想でない。それよりもベルク固有の問題、契約の問題とか駅のあり方に焦点を絞るべきだったんですね」

反対運動がわりと盛んなところでも、地元商店の声があまり浮かび上がってこない。そういう状況でも、お店の人は声をあげるのがためらわれるのでしょうか。

「まあ複雑でしょう。私自身、ベルクが立ち退きの店で有名になるのはベルクに対して申し訳ない。そういう運動でなく、商売で盛り上がりたいですから。でも追い出されたら商売そのものができなくなる」

再開発から町や店を守ろうというのがノスタルジーかどうかという議論は、いわば外野席どうしの言い合いであって、当事者であるはずのお店はどこかしら蚊帳の外なのかも知れません。

「でも、(「ノスタルジーに過ぎない」という発言がおさめられている)『東京から考える』という本を読みましたが、面白かった」

どちらかというと、再開発寄りの…。

「都市を、人間工学的に正しくデザインしようというね」

正しいなんて、決めつけじゃない?という気もしないでもないですが。

「というか、デザインって、誰がどう使うかです。マイシティ時代、館内の内装デザインのコンセプトが『ニューヨーク』と決まると、ニューヨーク風に商品は奥に引っ込めて下さい、目立たないようにして下さいとビルからお達しがあったんです(笑)。こっちは商売しているのに」

それは間違ったニューヨーク観じゃないですか?

「デザイナーのイメージなんでしょう。それがそのままビル全体の方針になる。デザインとハサミは使いようなのに、使われてどうするとは思いました」

(「ノスタルジーに過ぎない」と発言した)東浩紀さんについては、あまり触れるなとまわりから止められていまして…

「あ、そうなの?」

話がややこしくなりそうで。

「私が感じたのは、単純に視点の違いですね」

店長と東さんの?

「郊外と都心、車と歩き、家族連れと単独行動、文筆業と客商売というように見事に対照的です」

再開発も、東さんのように車の視点から見ると便利になるし、店長のように歩く視点から見ると町に味気がなくなる。どっちもそれなりに正しい。

「かえって、東さんの視点が私には新鮮でした。例えば、ベルクが東さん的視点から突かれて痛いところってあります。家族連れでは入りにくいところとか」

ベルクで家族連れ見かけますけどね。

「一人でいらっしゃっていた方が、ある日突然恋人を連れてみえ、ある日突然その間に子供の顔があったりして(笑)」

人の一生。

「ベビーカーが入れるよう椅子をどかすとか、こちらも極力対応させていただいていますが、立ち飲みで隣同士がくっつき合ってというスタイルは、家族連れにとってやさしくはない」

そういう物理的な制約はしかたない。大事なのは店の姿勢と客の寛容(笑)。それである程度カバーできるんじゃないか。

「ただ、東さんのポイントは『店の姿勢』より『店の造り』にあります。というか、店を含めた環境づくりか。例えば新宿駅を人間工学的に見て、ベルクの面積を10倍に広げるべきだと東さんならJRさんにいってくれる気がする(笑)。ベルクへのクレームで最も多いのは、実はタバコの煙でなく、狭い!です」

ーベルクは大衆店ですが、どちらかといえば大人向け、一人向けの店です。それは物理的な制約による、と?

「この狭さがベルク独特の雰囲気を醸し出しているともいえますが、もし広さを10倍にできるなら、私はしたい。それで雰囲気が壊れるといわれたら、そんなのはノスタルジーに過ぎないというでしょう(笑)」

裏切り者!(笑)でも店長がそのように店の立場から東理論(人間工学)を応用するのは面白いとは思います。ただ、立ち退きを迫られながら声をあげることができないお店への配慮が東さんにもうちょっとあってもよかったのでは?あ、いっちゃった(笑)。

「ノスタルジーという言葉が、一人歩きしているだけの気もします」

ーノスタルジーなんかじゃない!これが現実だ!と店長がここらでお店を代表して、異を唱えてみるとか。

「ベルクの現状は、いつかどこかでどなたかの参考になるかも知れません。例えば、突然、密室に呼び出され、退職勧告などされても、絶対にその場で応じず、冷静に考え、人に相談すべきである、とか。いじけたり焦れたり感情的になったら、負けです(笑)。まあ損するだけです。とにかく私たちの体験が、一つのサンプルになればとは思います。もちろん、あくまでもベルクはベルク。シモキタはシモキタ。東さんは東さん。ルミネさんはルミネさん」

そうですよね。助け合いの精神は失わずにいたいですが、みんな結局、自分に関することしか責任とれないし、それぞれ固有の問題がある。


④聖域ーベルクはよそ者?

「ビルのオーナーとテナントは、持ちつ持たれつの関係のはずなんですけどね。なぜか相いれない。ベルクがファッショナブルじゃないから?ファッショナブルって、何?と自問自答を繰り返すばかりです」

ールミネさんに聞いてみては?

「前ルミネエスト店長によると、なぜ食品売り場をなくしたのか?本屋をなくしたのか?という問い合わせが日々あるらしい。それに対する、ルミネさんの答えは決まっています。『それがルミネです』と」
 
ーオールマイティな答えだ。なぜベルクを追い出そうとするのか。

「『それがルミネです』絶対的な自己正当化。スタバを1階から2階に移動させた理由。(1階にあると)よそ者が入ってきてしまう。最初、意味がよくわからなかった。でも考えてみれば、ルミネさんのターゲットは20代前半のお洋服を買う女性客です。それ以外の人はよそ者と呼ばれている。だとしたら、ベルクはよそ者だらけ(笑)」

新宿駅全体がそうじゃないですか!

「駅はしょうがないとおっしゃってました。多少雑多でも」

しょうがない…

「ルミネさんは、会長が元鉄道員、国鉄民営化に大きく貢献された方とうかがっています。だからつい駅直結ならではの駅ビルを期待しそうになる。でもどうやら私の勝手な思いこみでした。会長は、鉄道のDNAを捨てた、という名言をを残しているそうですし」

もったいない。

「ルミネさんにしてみれば、私たちの館は(幹部の方たちはルミネを『私たちの館』と呼んでいました)駅ビルというより、駅とは一線をひいた聖域、聖なる館なのかも知れません」

ースタバのあったところには何が来たのですか?

「ビームスさん」

ーベルクのある場所も、ビームスにしたい?

「さあ。JR系列の花屋さんを入れたいという理由で、昔からあった花屋さんを退店させたこともあるそうです」

なぜベルクはこの場所で続けようとするのか。それがベルクです。

「あらためてお客様にうかがったわけです。この場所で続けてもいいのでしょうかと」

1万人を越える署名が、その答えといえますね。でも声をあげてよかったですね。でないと、弱者は潰されかねない。

「今、立場の弱い者はあまりにもバラバラで、あまりにも弱すぎます」

団結とか連帯という空気が薄れてる。

「むしろ、弱い者がさらに弱い者をいじめる構造になっていたりして。足の引っ張り合い」

店長も、いじめられる?

「いや…。ベルクのこと知らないのに…困っている人を見るとほっとけないタイプの方がいるようで(笑)、助言して下さるんです、色々。意固地になると、身のためにならないよ、とか」

脅しが入ってますね。だいたい、意固地じゃないでしょう。

「なんで、筋通らんじゃんという素朴な疑問ですよね」

お騒がせしている以上、そういう外野席のご好意もうまくかわしながら(笑)、店長はベルクを守るしかない。

「はい。フツーに続けさせていただきます」


⑤公共ーインディーズの可能

先日、出版関係者有志が運営する勉強会「でるべんの会」で、店長は、店に個性はいらないと力説していました。…考えなくていい、でしたっけ?それが東浩紀さんの、町に個性はいらないという発言とどこか重なる。

「海では海のものを食べる。山では山のものを食べるという地域性はありでしょうけど」

ーベルクは、駅という、目的も行き先も異なる人たちの交差する場の特性を生かした店だ、と店長はよくいいます。それは個性とはまたニュアンスが違うのでしょうか。

「商売する身からすれば、本場の味!とか、個性的なセレクト!とか、個性って、あくまでもキャッチフレーズに使う言葉の一つです」

東さんも、客の立場から、店に個性は求めないみたいなことをおっしゃっています。コンビニでいいじゃん、と。

「あるブログで、ベルクは女一人でも、店主に気に入られなくても飲めるのがいい、と書いてありました。確かに、女性だろうが老人だろうが、人間関係や自分の属性を気にしなくていい気軽さや便利さがコンビニ的。スタッフは私も含め、黒子に徹している、というか徹しざるをえない」

ひたすら回転している。コンビニとの違いは、商品へのこだわり方かな。あとベルク本にも書いてありましたが、本部が外にないこと。といって、内輪的な雰囲気は微塵もない…。

「スタッフは皆、黒子。お客様は皆、身元不明人(笑)」

ベルクのような不特定多数の人が集まる場所って、怖くないですか

「つまり?」

突然、危害を加えられたりとか…。

「身の危険を感じたことは21年間一度もないです。気づかなかっただけ?(笑)人間って、お互い顔が見えないと妙に暴力的になるものです。ところがベルクのような狭い空間で肩を寄せ合りあいながら美味しいものを食べていると、自然と譲り合いの精神が生まれたりする(笑)」

ーベルクミラクル。

「ベルクのような店って、客のほうもある程度熟練が求められる。まずは常連さんの見よう見まねで…」

お客様もお店も共に成長する。ベルクの場合、いつでも初回客が入ってきますし、殺伐ともなれ合いとも違う、独特の緊張感と親和的ムードがありますよね。

「いくらネットが発達しても、人はベルクのような場所に集まってくる」

ーベルクは本当の意味でのパブですね。パブ風の店じゃなく、店のあり方がパブ。日本語に訳すと公共の場。店長が敬愛するという赤羽のまるます屋さんも、本質的にパブです。

「パブこそ個人店向きだと私は思います」

つまり?

「公共物って、ガスにしろ電気にしろ使用法は使用者が決める。ベルクもそういうところがある。朝からモーニングもビールもおつまみも用意して、あとはお好きにどうぞと」

それが個人店向きというのは?

「個人店?」

店長がいったじゃないですか。パブは個人店向きって。

「古川琢也さんの『セブンイレブンの正体』という本を読んでいて気づいたのですが、コンビニも個人店ですね」

そうか。フランチャイズ契約を結んでいるだけで。といっても、実質的には本部に従属することになるし、切られる時はすぱっと切られる。契約社員や定期契約に似ている。

「うちのように本部がないというか、現場が本部というべき個人店は、フランチャイズと区別してインディーズと呼ぶべきかも」

ーチェーン店やフランチャイズなんかだと、そのくらい融通つけられないの?、目の前の私よりマニュアル優先?と聞きたくなることがあります。ベルクのような個人店は、決定権を握る経営者が現場にいる。そのぶん、臨機応変な対応がまだ可能でしょう。

「ビールであれ何であれ、食材のちょっとした異変にスタッフは即座に反応します。毎日飲んでいるから(笑)。もちろん、日々多少のブレはありますよ。ただ、飲めないことはないが、ブレの範囲を越えた変化というのがあるんです。そこを見極める必要がある。何かの信号かも知れない。仮にメーカーが原材料や工程は変わらないといっても、私たちは自分の味覚のほうを信じます。メーカーだって、私たちを味の同士と思って(笑)、味覚で応じてほしい。ただ、大手のビール会社とかだと、建前というか公式コメントみたいなものがあって」

認めない?

「さすがにベルクの意見は重視してくれるようになりました。時には、公式とは別の情報を漏らしてくれることもあります。原材料も工程も変わらないが、実は工場が変わりました、とか(笑)」

決定的な変更じゃないですか!(笑)

「そうとわかれば、味がなじむまで多少時間がかかりますから、こちらもガス圧など微妙に調整して様子を見ようと前向きな姿勢になれます」

大手といっても、現場は個人(醸造責任者)が体はっているんですもんね。なかなか職人のように直で腹を割ってというお付き合いは難しいかも知れませんが、長年の信頼関係によってその壁も徐々に崩れていくのではないでしょうか。ルミネさんとの関係も、そうなるといいですね。

「フランチャイズやチェーンの場合、新しい商品を増やし、売れない商品は削るでしょう?うちの場合、現場のスタッフは一つ一つの商品に開発から関わるから、愛着があってどれも削れない(笑)」

だからあんなにメニューが多いのか。削れなくて増える一方。

「一日に一個しか売れない商品でも、それ目当のお客様がいらっしゃる…」

ースタッフの未練がたった一人のお客様を救う(笑)。ただ、ロスの問題が。

「仕入れや仕込みを小まめに調整すれば、問題ありません」

なかなかそこまで普通出来ないのでは。長年の経験やカンがものをいうのでしょうが。

「店を愛していれば、さほど苦にならない(笑)」

愛の力?それに関しては、実際に苦労しているスタッフの皆さんの声も聞くとして(笑)、チェーン店やフランチャイズでは考えられないようなことが、ベルクでは日々起きているのでしょう。

「ベルク自体にもう何か意思があります」

喋りそうですか?

「すねたり、機嫌がよかったりするのはもうわかりますね」

ーベルクはベルクとしかいいようのないところがありますね。

「何なんでしょうね」

ー狭くて気軽な店ですが、奥深くてつかみどころのない店ともいえる。でも、それで商売が成り立つなら、誰も文句はいえない。文句をいっているのはルミネさんだけか(笑)。

「文句すらおっしゃらない。ただ、出ていけと」

呪文のように(笑)。それにしても「公共の場こそ個人店(インディーズ)」というのは、目から鱗でした。ずいぶん昔に国鉄は民営化されましたが、駅が駅であり駅ビルが駅ビルである限り、公共性は決して消えてなくなりません。幸運を祈ります。

「ありがとうございます」
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